Blog 西条すこやかブログ
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カンピロバクター腸炎

「ガルウイングがおった!」

ある日の診察室のひとコマです。

その日、いつも元気でパワフルな看護師さんが腹痛のため患者としてやってきました。

数日前に焼肉を食べた

2日前から発熱・腹痛・下痢があり、かなりぐったりしてベッドの上に横になっています。

よく話を聴くと、数日前に家族で焼肉を食べに行ったとのことです。

向かった先は…

血液検査と点滴をした後、僕が向かった先は「細菌検査室」です。

何をするためでしょうか?

答えは「便のグラム染色」です。

そして冒頭の発言となったのです。

ガルウイングとは?

ガルウイングとはカモメの翼のことです

ガルウイングとは“カモメの翼”のことで、カンピロバクターをグラム染色(細菌を色素で染色する方法)すると、あたかも“カモメの翼”のような形に見えることから、ガルウイングと呼ばれています。

診断確定

矢印の先にいるピンク色の細菌がカンピロバクターです
<沖縄県立中部病院卒後医学臨床研修事業HPから画像をお借りました>

便にカンピロバクターらしき細菌がいることが確認できました。

歩くのも辛そうなので重症のカンピロバクター腸炎と判断し、抗菌薬を処方しました。

その数日後にはいつもの元気な姿を見せてくれました。
また念のため提出していた便培養の結果には“カンピロバクター”の文字がありました。

前置きが長くなりましたが、今回のテーマは「カンピロバクター腸炎」です。

細菌性胃腸炎のなかで最も多い

感染性胃腸炎は、大きく分けてウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎があります。

ウイルス性胃腸炎の原因としては、ノロウイルスやロタウイルスが有名です。

一方、細菌性胃腸炎のなかで最も多いのがカンピロバクター腸炎です。

高熱・下痢が激しく、ときには血便も

カンピロバクター腸炎の症状は腹痛・下痢・嘔吐であり、一般的な胃腸炎と同じです。

ただし高熱が続くことが多く、下痢も激しく、ときに血便となることもあります。

原因は鶏肉のことが多いです

原因としては鶏肉が多く、加熱不十分の場合に感染してしまうことがあります。

潜伏期間が2~5日と少し長いため、原因が特定できないことも多いです(5日前までの食事メニューを全部覚えておくのは至難の業ですよね)。

また右下腹部の痛みを訴えることが多いため、虫垂炎と紛らわしいときがあるのも厄介です。

グラム染色のメリット

グラム染色の最大の長所は迅速性です!

便の培養検査は結果が出るまで少なくとも数日はかかるため、その場でカンピロバクター腸炎かどうかの判断がつきません。そこで役に立つのがすぐに結果がわかる便のグラム染色というわけです。

基本的に予後の良い病気です

治療ですが、大半は自然に治るため、軽症の場合は整腸剤や点滴などの対症療法をおこなうことが多いです。

しかし、重症の場合やご高齢・免疫不全がある方などは抗菌薬を投与することもあります。

通常は数日~1週間程度で改善する予後の良い病気です。

でも1000人に1人が…

最後にお伝えしたいことがあります。

それは「ギランバレー症候群」です。

カンピロバクター腸炎を起こした1~2週間後に、手足の力が入りにくい・しびれるなどの症状が出たらただちに医療機関を受診してください。

カンピロバクター腸炎を発症した方の0.1%にギランバレー症候群という神経の病気を合併することがあるからです。0.1%と聞くと少なく感じるかもしれませんが、1000人に1人と考えると決して侮れないと感じていただけるかもしれません。

僕はカンピロバクター腸炎と診断した際は、ギランバレー症候群の話を必ずするようにしています。

大学時代の苦い想い出

僕自身も大学時代にカンピロバクター腸炎で大変苦しんだ想い出があり、今回テーマに取り上げました。

大学構内のトイレで、生焼けの鶏肉を食べたことをあれほど後悔した人間は僕が最初で最後だと思います。

皆様も鶏肉はしっかりと焼いてから食べるように心掛けてくださいね。

東広島市西条町助実の内科・呼吸器内科・アレルギー科の『西条すこやか内科』は呼吸器疾患だけでなく、内科全般の疾患を幅広く診療致します!

西条すこやか内科 
院長 奥本 穣(呼吸器専門医・総合内科専門医)