ドクターランナー
先週末に岡山県で開催された「おかやまマラソン2023」にドクターランナーとして参加してきました。
「ドクターランナーって聞いたことはあるけど、どんなことをしているの?」と気になる方もおられるかもしれません。
そこで今回は、僕の趣味のひとつ『ドクターランナー』をテーマにお伝えしようと思います。
ドクターランナーの役割とは?
ドクターランナーの目的は、「コース内からランナーの観察をおこない、緊急時には初期対応をおこなうこと」です。
つまり、一般ランナーとともに42.195kmを走りながら、体調不良を訴えているランナーがいないかどうかに目を配るのが役割です。
それでは、ドクターランナーが具体的にどのような活動をするのかを、今回のおかやまマラソンを例にご紹介いたします。
事前の説明会
ドクターランナーとしての業務は大会当日だけではありません。
大会の約1ヶ月前に説明会があるのです。
説明会では、大会当日の説明はもちろん、医療スタッフ同士の顔合わせも兼ねています。
「チーム医療」という言葉があるように、決して医療は一人で成り立つものではないため、事前に医療スタッフ同士の連携を取っておくことが重要となります。
大会当日の朝
大会当日、会場に着くと総合受付でこのようなグッズをいただきます。
具体的には、ドクターランナーのビブスの他、救護者に手渡すためのゼリー飲料や飴、応急処置に必要な絆創膏やガーゼです。他にも、救急本部・救護所の連絡先一覧や、救護者への対応を記録するための救護簿もいただきます。
救護簿には、救護者の氏名や症状、どのような対応をおこなったかをその都度記載することになっています。
いよいよスタート
今回のおかやまマラソンは、55名の医師がドクターランナーとして参加しました。
それぞれの医師は、大会本部から指示されたペースで42.195kmを走ります。
事前に自己ベストタイムを登録しておき、それよりも遅いタイムでの走行ペースが各自に割り当てられます(自己ベストより早いタイムだと、僕たちが倒れてしまいます)。
ドクターランナーといっても基本的には一般ランナーと一緒ですので、通常通りにスタートして走ります。
周囲のランナーを観察しながら走る
僕は5時間後半~6時間のペースを割り当てられたので、8分00秒/kmを目安に走ることに決めました。
スタート後は周囲のランナーの様子に気を配りながら、ペースを守って走りました。
“晴れの国”らしからぬ小雨に見舞われる時間帯もありましたが、それほど気温が低くならなかったのが幸いでした。
30km地点の岡南大橋の高低差には心が折れそうになりましたが、なんとか根性で上りきり、そのままゴールとなりました。
ちなみに今回のタイムは「5時間54分11秒」でした。
ゴール後に業務報告
完走後は受付で本日の業務報告と備品の返却をおこないます。
幸いにも今大会では大きな傷病者はいなかったようで安心しました。
また、帰りの受付で「来年もぜひドクターランナーで参加してくださいね」と言っていただいて非常に嬉しかったです。
お給料は貰えるの?
ときどき「ドクターランナーってお給料は貰えるの?」と尋ねられることがあります。
少なくとも僕はこれまで貰ったことはありませんし、特に欲しいとも思いません。
あくまで走るのが好きでマラソン大会に参加しており、せっかく参加するなら皆様のお役に立ちたいという想いでドクターランナーとして活動しているからです。
中には大会終了後に地元の名産品を自宅に送ってくださる自治体もあり、そのお心遣いがとても嬉しかったです。
充実した医療救護体制
おかやまマラソンの医療救護体制は非常に充実しており、通常の「AED班」が30km地点までは1kmごと、30km以降は500mごとに配置されています。またAEDを所持してコースを自転車で走行する「自転車AED班」も17班配置されていました。
各救護所も含めて、なんと71台のAEDが配置されていました。
救命率を少しでも上げるために
以前の記事(AEDにまつわる話)でもご紹介したように、いかに心肺停止後に短時間で電気ショックを与えるかが救命率を左右します。
そのため、おかやまマラソンではコース内のどの場所であっても2分以内にAEDが到着することを目指して、計71台のAEDが配置されていたのです。
現に、過去の大会では数年に1回は心肺停止の報告例があるため、このような医療救護体制は非常に重要です。
またランナーにとっても安心して参加できるマラソン大会であると感じました。
温かいおもてなしに感謝!
おかやまマラソンは、コース途中のエイドでの給食(定番のバナナ・チョコからシャインマスカット・きびだんご・ラーメンまであります)や沿道からの大きな声援も魅力の大会です。
学生を始めとしたボランティアの方達の温かい“おもてなし”も非常に印象に残りました。またマラソン界のレジェンドである有森裕子さんと2度ハイタッチできたことも良い思い出となりました。
ドクターランナーとして、素晴らしい大会に参加させていただいたことを心より感謝いたします。
来年も予定が合えば、ぜひ参加させていただこうと思いますので、宜しくお願いいたします!
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西条すこやか内科
院長 奥本 穣(総合内科専門医・ICLSインストラクター・JMECCインストラクター)