パルスオキシメーター
「新型コロナウイルス感染症の自宅療養者に自治体が貸し出していたパルスオキシメーターが全国で少なくとも30万個が未返却の状態である」と先日ニュースで報じられていました。値段が安いものでも数千円はするため、まだ自宅にあるという方は返却にご協力をお願いしたいと思います。
そこで今回は、コロナ禍で一躍脚光を浴びた「パルスオキシメーター」を取り上げたいと思います。
呼吸器科医の必須アイテム
呼吸器科医とパルスオキシメーターは切っても切れない関係です。
呼吸器科医の中には白衣のポケットに”Myパルスオキシメーター“を忍ばせているドクターもいるほど呼吸器科医にとっては必須アイテムなのです。
酸素飽和度とは?
呼吸をすることで肺から取り込まれた酸素は、赤血球中のヘモグロビン(Hb)とくっつきます。そして心臓から全身に動脈血として運ばれていきます。
「その動脈血のなかのHbの何%に酸素がくっついているか」を表したものが“酸素飽和度”です。
分かりやすくいうと、トラック(=ヘモグロビン)が荷物(=酸素)を運んでおり、それぞれのトラックの荷台にどれくらい荷物が積まれているかを表したものが“酸素飽和度”です。荷台に荷物がぎっしりと積まれている状態が100%です。
酸素飽和度が簡単に測れる機械
その酸素飽和度を皮膚から簡単に測ることができるのがパルスオキシメーターです(ちなみに日本人が世界で最初にパルスオキシメーターを開発したことはあまり知られていません)。
なお、実際の診療場面では酸素飽和度は“サチュレーション”とか“サット”と言われることが多いです。
90点未満は不合格
健康な方の酸素飽和度は96~98%程度です。
逆に90%を下回ると呼吸不全が疑われ、酸素が必要と判断されることが多いです。
僕は普段わかりやすいように「100点満点で〇点です」というようにお伝えしているのですが、90点未満は不合格と考えるとかなり厳しいテストですね。それくらい“身体にとって酸素は大切”ということの裏返しでもあるかと思います。
パルスオキシメーターの弱点
しかし、パルスオキシメーターにも弱点があります。
例えば、指先が冷たい場合やマニキュアを塗っている場合などでは正確な数値が測れません。
以前の勤務先で、いつもマニキュアを塗ってこられる患者様がおられたのですが、そのことをお伝えした後からは毎回1本だけマニキュアを塗らずに受診してくださるようになり大変感謝したことがありました。
酸素飽和度が全てではありません
また、息苦しさを感じて酸素飽和度を測っても、酸素飽和度は正常のこともあります。
例えば、貧血がある場合です。
先ほどのトラック(=ヘモグロビン)と荷物(=酸素)で考えていただくとわかりやすいと思います。貧血はヘモグロビンの値が低くなる病気です。
つまり、トラックの数自体が減ってしまうので、少ない数のトラックが頑張ってパンパンになるまで荷物を載せた(酸素飽和度は正常)としても、身体中に十分な酸素を送ることは難しく、息苦しさを感じることになります。
呼吸器の症状の難しさ
つまり「酸素飽和度が正常だから息苦しくない」とは決して言い切れないわけです。
このように、なかなか一筋縄ではいかないのが呼吸器の症状の難しい点でもあり、興味深い点でもあります。
そして、そういった場面こそ我々呼吸器科医の腕の見せ所だと考えています。
当院は呼吸器専門クリニックとして、息切れの原因をしっかりと究明し改善策をご提案できるよう心掛けて参ります!
パルスオキシメーターのもうひとつの弱点はこちら〉〉 一酸化炭素中毒
長引く息切れ・咳・喘息などでお悩みの方は、呼吸器専門クリニックである東広島市西条町助実の『西条すこやか内科』までお気軽にご相談ください。
西条すこやか内科
院長 奥本 穣(呼吸器専門医・総合内科専門医)