尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎)
今回のテーマは、“日本人女性の半数がかかると言われる病気”です。
いったい何の病気だと思いますか?
答えは『膀胱炎』です。
そこで今回は、膀胱炎を中心に『尿路感染症』をテーマにお伝えいたします。
女性が膀胱炎になりやすい理由
女性の方が男性より尿道が短いことなどの身体の構造的な理由もあり、膀胱炎は女性に非常に多い病気です。
特に、若い女性や高齢の女性に多いと言われています。
若い女性が多い理由としては、性的活動の機会が多いことや月経などが考えられています。
また高齢女性は、基礎疾患の存在や免疫力低下が原因で膀胱炎を引き起こします。
ご高齢の方は、何度もトイレに行くのが億劫といった理由でもともと飲水量が少ない傾向にあるのも原因のひとつです。
例えば、新型コロナやインフルエンザなどに罹患したことをきっかけに飲水量がさらに減り、最終的に尿路感染症を発症してしまうケースは非常に多いです。
このように膀胱炎の原因はさまざまですが、案外見逃されがちなのが「便秘」です。
便秘が膀胱炎の原因となるケースは多いため、便秘のコントロールも重要です。
排尿時痛・頻尿・残尿感
排尿時痛・頻尿・残尿感が代表的な症状です。なかには血尿が出る場合もあります。
また勘違いされやすい点ですが、基本的に膀胱炎では発熱はみられません。
もし排尿時痛などの症状があり発熱もみられる場合は、『腎盂腎炎』を考える必要があります。
腎盂腎炎は膀胱炎をきっかけとして発症することの多い病気です。
つまり膀胱だけでなく、腎臓まで細菌感染を起こした場合を腎盂腎炎と呼ぶのです。
膀胱炎と腎盂腎炎を合わせて『尿路感染症』ということもあります。
膀胱炎の診断と治療
自覚症状と尿検査から診断します。
具体的には排尿時痛などの膀胱炎症状があり、尿中に白血球が増えていれば『膀胱炎』と確定診断します。
膀胱炎は基本的に抗生物質の飲み薬で治療します。
膀胱炎の多くは「大腸菌」という細菌が原因となり発症します。
この大腸菌も薬剤耐性化(通常の抗生物質が効かなくなること)が近年問題となっています。
薬剤耐性化を防ぐために、処方された薬はしっかりと飲み切るようにしてください(症状が改善してすぐに内服をやめると、中途半端に治った状態となり耐性菌のリスクが上がります)。
膀胱炎の予防法
膀胱炎の予防法としては以下のようなものが代表的です。
- 水分を多くとる
- トイレを我慢しない
- トイレ後は前から後ろに拭く
- 規則正しい生活(免疫力を保つ)
- 便秘のコントロール
特に、水分を多めにとって、トイレを我慢しないことが大切です。
お仕事上、トイレになかなか行けない方もおられるでしょうが、可能な範囲内で対策してみてください。
SGLT2阻害薬による尿路感染症
近年、SGLT2阻害薬という薬剤が処方されるケースが増えています。
糖尿病だけでなく、慢性心不全や慢性腎臓病にも有効な素晴らしい薬だからです。
具体的には、フォシーガ・ジャディアンス・スーグラといったお薬が代表的です。
しかし、このSGLT2阻害薬は尿路感染症のリスクを上げてしまうことが分かっています。
なぜならSGLT2阻害薬は、”糖分を尿から排泄させることで血糖値を下げよう”という薬剤です。
その結果、膀胱には糖分が含まれた尿が溜まることになります。
糖分は細菌にとっても栄養分となるため、尿路感染症を起こしやすくなるのです。
そのため、SGLT2阻害薬を内服している患者様で尿路感染症を繰り返す場合は、別の種類の薬剤への変更なども検討することがあります。
膀胱炎は繰り返すことの多い病気ですが、生活習慣の改善である程度は予防可能です。
当院でも尿検査をおこなっておりますので、膀胱炎を疑う症状がございましたら、お気軽にご相談ください。
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東広島市西条町助実の内科・呼吸器内科・アレルギー科の『西条すこやか内科』は呼吸器疾患だけでなく、内科全般の疾患を幅広く診療致します!
西条すこやか内科
院長 奥本 穣(呼吸器専門医・総合内科専門医・抗菌化学療法認定医)