アレルギー科
舌下免疫療法ー 8割の方で自覚症状が改善 ー
舌下免疫療法は1日1回薬剤を舌の下に1分間置いて飲み込むだけの治療法です。自宅でも簡単に治療が可能で、3~5年間毎日続けることで根本的な体質改善につながるとされています。「スギ花粉症」や「ダニアレルギー性鼻炎」でお悩みの方は、当院で治療を始めてみませんか?
アレルゲン免疫療法とは
アレルゲン免疫療法は、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を少量ずつ投与することで、徐々に身体を慣れさせていく治療法です。アレルゲン免疫療法により、アレルギー症状を和らげたり、根本的な体質の改善も期待できる治療法です。
舌下免疫療法のメリット自宅で治療が可能です
これまでは「皮下免疫療法」というアレルゲンを皮下注射で投与する治療法が主流でした。しかし皮下免疫療法は、何度も通院が必要であること・注射の痛み・注射部位のかゆみなどから患者様の負担が大きい状況でした。しかし、2014年以降に行われるようになった「舌下免疫療法」は、注射による痛みなどは一切ありません。また自宅で治療可能という大きなメリットもあるため、近年注目されている治療法です。
当院では、患者様の負担がより少ない舌下免疫療法をおこないます。現在、舌下免疫療法は「スギ花粉症」と「ダニアレルゲンによる通年性アレルギー性鼻炎」に対して行われており、当院では積極的に治療を行っております。
すべての人に効果があるの?8割の方に効果があります!
舌下免疫療法を受けた8割の方で自覚症状が改善します(うち2割は完治します)。
しかし、残念ながら2割の方には効果がありません。このように「必ずしも全員に効果がある治療法ではない」ということはご理解ください。
治療期間
3~5年の治療が望ましいです。途中で治療をやめてしまうと、再び症状が出現することが多いので根気強く治療を継続しましょう。ただし、残念ながら2割の方には効果が出ませんので、1年間治療を継続しても全く症状が改善しない場合は治療を続けるか医師と相談します。
どれくらいで効果が出るの?
スギ花粉症では、治療開始後の初めてのスギ花粉症のシーズンから効果が期待できます。またダニアレルギー性鼻炎では、治療を開始して数ヶ月後から効果が期待できます。
いずれも3~5年と長期間治療を継続することで最大の効果が得られます(治療が終わって数年後に症状が再発することがありますが、その場合は再度1~2年間の治療を行うことで症状が改善することが多いです)。
対象年齢
5歳以上65歳未満
(65歳以上の方も治療を受けていただくことは可能ですが、治療効果が弱くなる可能性があります。ご興味がある方は、まずは当院にご相談ください。)
小さなお子様は、薬剤を舌の下に1分間保持できることが条件となります(例えば、ご自宅でラムネを舌の下に1分間保持できるか試してみて、問題なく出来るようなら治療可能と思います)。においや苦みなどもない薬剤ですので、お子様でも抵抗なく治療を続けられることが多いです。
費用
- 初回(アレルギー検査含む)
- 約5,000円(3割負担の場合)
- 2回目以降
- 1カ月分の薬代:約2,000円(3割負担の場合)
治療を受けられない方
- 治療開始時に妊娠中・授乳中の方
- 重症の気管支喘息の方
- 治療に影響を与えうる薬剤を使用中の方非選択的β阻害薬・全身性ステロイド薬・三環系抗うつ薬・モノアミンオキシダーゼ阻害薬など
- 全身的に重篤な疾患をお持ちの方悪性腫瘍・自己免疫疾患・免疫不全症・慢性感染症・重症心疾患など
- 継続的な通院が難しい方
実際の治療の流れ
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①検査・診断
舌下免疫療法の適応があるかどうかを確認するため血液検査を受けていただきます。
血液検査ではスギやダニに対する特異的IgE抗体を測定します。
血液検査で「スギ花粉症」あるいは「ダニアレルギー性鼻炎」と確定診断された患者様が治療を受けることができます。
※なお、過去2年以内に他の病院でアレルギー検査をしており、その結果をお持ちの方はこれらの検査は不要です。小さなお子様や採血が苦手な方には、たった1滴の血液で41種類のアレルギーが分かる「ドロップスクリーン検査」がおススメです。
ドロップスクリーン検査について -
②初回投与
初めての服用は当院で行います(その後30分間は院内で副作用が出ないかをチェックします)。
2日目からはご自宅などお好きな場所で1日1回服用していただきます。 -
③1週間後に受診(薬剤を増量)
初回投与の1週間後に受診していただきます。
特に問題なく服用できていれば2週目以降は薬剤を増量します。 -
④月1回の通院(3~5年)
以後は月に1回の受診を3~5年続けていただきます。
当院で使用する薬剤
当院では、シダキュア(スギ治療薬)とミティキュア(ダニ治療薬)を使用します。
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スギ花粉症シダキュア舌下錠
最初の1週間は2000 JAU錠を1日1回1錠舌下投与します。2週目以降は5000 JAU錠を1日1回1錠継続します(3~5年間)。
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ダニアレルギー性鼻炎ミティキュア舌下錠
最初の1週間は3300 JAU錠を1日1回1錠舌下投与します。2週目以降は10000 JAU錠を1日1回1錠継続します(3~5年間)。
実際の服用手順
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手順1
服用する直前にシートをはがし、乾いた手でお薬を取り出してください。
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手順2
舌の下にお薬を置き、1分間保持した後、飲み込んでください。
舌の下に置くとすぐに唾液で溶けてなくなりますが、唾液はすぐに飲み込まず、1分間舌の下に保持してください。
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手順3
その後5分間は、うがい・飲食を控えてください。
薬剤によるアレルギー反応が強く出る可能性があるため、服用の前後2時間は激しい運動・アルコール摂取・入浴などは控えてください。
治療の開始時期
- シダキュア舌下錠
- 治療の開始時期は6月~12月となります。
(スギ花粉が飛ぶ可能性のある1月~5月は副作用が強く出る可能性があるため、治療を開始することができません) - ミティキュア舌下錠
- 1年中いつでも治療開始できます。
舌下免疫療法に関するご質問
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副作用はありますか?
口の中のかゆみ・むくみ、のどの違和感、耳のかゆみなどが出ることがあります。
いずれの症状も治療を開始して1ヶ月以内に起きることが多いですが、いずれも抗アレルギー薬の内服で対処可能な程度で、徐々に症状は落ち着く方が大半です。
アナフィラキシーショックは1億回に1回という海外の報告がありますが、日本ではこれまで死亡例はありません。 -
スギとダニの治療を同時に開始することはできますか?
当院では、スギとダニ同時の治療開始は行っておりません。
同時に治療を開始するとアレルギー反応が起こりやすいため、1ヶ月以上間隔を空けて治療を開始しましょう(例えば、治療開始時期の制限があるスギをまず開始して、1ヶ月以上空けてからダニを開始するなど)。
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治療中に抗アレルギー薬を内服してもいいですか?
問題ありません。
抗アレルギー薬を内服することで治療効果が落ちることもありません。治療開始早期では副作用予防のため抗アレルギー薬を併用することも多いです。
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治療の期間中に妊娠した場合はどうしたらいいですか?
治療は継続可能です。
妊娠中・授乳中に新たに治療を開始することはできませんが、現在治療中で症状が落ち着いていれば治療を中断する必要はありません。
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薬を服用する時間帯はいつでも良いですか?
基本的にいつでも大丈夫です。
ただし治療を開始して落ち着くまでは、アレルギー反応が起きたときに相談しやすいように家族のいる場所で日中に服用されることをお勧めします。
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薬を取り出すときに割れてしまったらどうしたらいいですか?
割れてしまった場合は、1錠分全てを取り出し服用してください。
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修学旅行や合宿などにも薬を持参したほうがいいですか?
日常と異なる環境では無理して服用する必要はありません。
旅行や合宿など日常と異なる環境では無理して服用する必要はありません。その期間は休薬していただいて構いません。
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服用の前後2時間以内に部活やプールの授業などがある場合はどうしたらいいですか?
時間をずらして服用してください。
その日だけは服用する時間帯を朝から晩に変更するなどの工夫をして、1日1回服用するようにしてください。
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かぜなどで体調が悪いときも服用したほうがいいですか?
一度休薬してください。
体調不良のときは一度休薬してください。体調が回復したら服用を再開してください。
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予防接種の日は服用していいですか?
予防接種の日は休薬してください。
予防接種をおこなうと注射部位が腫れたり、発熱などの症状が出ることがあります。薬剤による反応と区別するため、予防接種の日は休薬してください。