呼吸器内科
気管支喘息ー 明け方の息苦しさ・ヒューヒュー ー
気管支喘息は夜間~早朝にかけて息苦しさ・ゼーゼー・ヒューヒューがある病気です。
喘息を放置していると、徐々に気管支の壁が厚くなり、気管支内が狭くなります(気道リモデリング)。その結果、喘息の症状がさらに強くなり、治療の効果自体も弱くなってしまいます。気道リモデリングを防ぐためには、いかに早期に気管支喘息と正確に診断し、適切な治療をおこなうかが非常に重要です。
発症年齢喘息は子どもだけの病気ではありません
気管支喘息の発症年齢は、幼児期と40~60歳代の2つのピークがあります。
幼児期に発症するものを「小児喘息」と呼びます。小児喘息の場合、思春期には症状が良くなることが多いですが、約3割は大人まで症状を持ち越すと言われています。
また大人(特に40~60歳代)になって新たに発症することもあり、その場合を「成人喘息」と呼びます。
-
小児喘息の特徴
小児喘息はダニや花粉などのアレルギー物質(アレルゲン)が原因で気道に炎症が起きる「アトピー型喘息」が大半です。
-
成人喘息の特徴
成人喘息の約半数はアレルゲンが特定できない「非アトピー型喘息」です。
また、成人喘息の1割はNSAIDsと呼ばれる主に解熱鎮痛剤として使用される薬剤を内服することで発作を起こすNSAIDs過敏喘息(アスピリン喘息)と言われています。
症状・原因夜間~早朝の息苦しさ・ゼーゼー
気管支喘息は、空気の通り道である気管支が一時的にギュッと狭くなることで、呼吸困難・咳・ゼーゼー・ヒューヒューなどの症状(喘息発作)を引き起こす病気です。特に夜間~早朝にかけて症状が強くなるのが喘息の特徴です。
喘息発作の原因としては、アレルギー・感染症・運動・ストレス・気候の変化・黄砂など様々なものが挙げられます。
ー 夜間~早朝に症状が強くなる理由 ー
睡眠中はリラックスして副交感神経が優位となるため、気道が狭くなり発作が起きやすいのです。また、布団に潜んでいるダニや明け方の冷え込みなどの刺激を受けやすいことも夜間~早朝にかけて症状が強くなる要因です。
喘息のメカニズム気道リモデリングを防ぐことが重要です
気管支喘息は、「慢性的なアレルギー性の気道炎症」を起こす病気です。
喘息で注意すべき点は、喘息発作のときだけでなく、無症状のときも常に気道は炎症を起こしているという点です。そして、長期にわたり気道の炎症を放置していると、徐々に気管支の壁が厚くなり、その結果気管支内が狭くなってしまうのです(このことを「気道リモデリング」と呼びます)。
気道リモデリングを起こすと、喘息の症状が強くなり、治療の効果自体も弱くなってしまいます。そのため、いかに早期にきちんと気管支喘息と診断し、適切な治療を行うかが非常に重要となります。
検査・診断
当院では問診や聴診だけでなく、肺機能検査・呼気一酸化窒素(NO)検査・胸部レントゲンなどの結果をみて総合的に診断いたします。
また必要時は、血液検査・CT検査も適宜提案させていただきます(喘息に似た症状を起こす他の病気もあるため、これらの検査でその病気ではないことを確認します)。
治療治療の基本は吸入ステロイド
-
治療方法①普段の治療
治療の基本は、気道の炎症を抑えるための吸入ステロイド薬となります。
ステロイドと聞くと不安に感じる方もおられますが、内服のステロイド剤とは違いますので、適切に使用(吸入後のうがいが特に大切です)すれば全く心配いりません。また、妊婦さんも吸入ステロイド薬は安全に使用していただけます。
なお必要時は、吸入ステロイド薬に抗アレルギー薬などの内服薬を追加する場合もあります。吸入ステロイド薬は、様々な種類のデバイス(吸入器具)が発売されており、デバイスごとに吸入の仕方や1日の吸入回数なども異なります。
当院では、患者様の状態・生活習慣・ご希望に合わせて、患者様ひとりひとりにとって適切な選択をおこなえるよう努めております。 -
治療方法②喘息発作時の治療
短時間作用型の気管支拡張薬の吸入(メプチンなど)や、ネブライザーという機械を使って霧状の薬を吸入します。これらの薬を吸入すると気管支が拡がり症状が和らぎます。
ダニやスギによるアレルギー性鼻炎も合併している場合
ダニやスギによるアレルギー性鼻炎を合併している場合は、ダニやスギアレルギーに対する舌下免疫療法をおこなうことで、鼻炎症状だけでなく喘息の症状の改善も期待できます。
舌下免疫療法について
当院では舌下免疫療法も積極的に実施しておりますので、お気軽にご相談ください。
「喘息・COPDオーバーラップ(ACO)」をご存じですか?
近年、喘息とCOPDという異なる2つの病気の特徴を併せ持つ「喘息・COPDオーバーラップ」という病気が注目されています。英語表記では、ACO(Asthma and COPD Overlap)と書き、“エイコ”と読みます。
COPDはタバコが原因となる病気で、以前は「肺気腫」や「慢性気管支炎」などと呼ばれていました。
わかりやすく説明すると、これまでに気管支喘息と診断されていた方で、過去の喫煙歴や胸部CTでCOPDを疑うような所見があった場合、ACOの可能性があるということです。
逆に、これまでCOPDとして治療されてきた方で、喘息を疑うような所見があった場合も同様にACOの可能性があります。
ACOと診断することに何のメリットがあるかというと、治療法が違うからです。つまり、COPDでも喘息でも治療は吸入薬なのですが、吸入薬の種類が異なるのです。
例えば、これまでCOPDとして治療されてきた方に、喘息の治療法である吸入ステロイドを追加すると症状が改善することがあります。
当院は院内にCT検査や肺機能検査・呼気一酸化窒素(NO)検査も完備しておりますので、ACOの可能性がある場合も迅速な検査が可能となっておりますので、ご安心ください。