呼吸器内科

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間質性肺炎ー 徐々に肺が硬くなる病気 ー

労作時の息切れや乾いた咳が長期間続いていませんか?これらの症状は間質性肺炎の可能性があります。
間質性肺炎はさまざまな原因で肺が硬くなる病気で、呼吸器科医による診療が望ましい専門性の高い病気です。近年では抗線維化薬(肺が硬くなるのを抑える薬)という新たな薬剤を使用するケースも増えています。

間質性肺炎とは?肺胞の壁(間質)が硬く分厚くなる病気

「肺炎」という名前がついているため誤解されることがあるのですが、細菌やウイルス感染で起きる通常の肺炎とは異なり、間質性肺炎は“感染症”ではありません。人間の肺の中には肺胞という小さな袋があり、その肺胞で酸素と二酸化炭素のガス交換が行われています。

細菌やウイルス感染が原因となる通常の肺炎では肺胞に炎症を起こします。
一方、間質性肺炎は様々な原因によって肺胞の壁に炎症・損傷が起こり、肺胞の壁が硬く分厚くなる病気です。肺胞の壁の部分を「間質」と呼ぶため、間質性肺炎という病名なのです。

症状ゆっくり進行するため、症状に気づきにくいです

初期は無症状のことも多く、検診でレントゲンの異常を指摘されて受診される方も多いです。
また間質性肺炎は通常ゆっくりと進行するため、なかなか症状に気づきにくいです。そして病状が進行し肺が硬くなると、うまく肺が膨らむことができず酸素を取り込みにくくなるため、労作時の息切れや乾いた咳(痰のからまない咳)が出現します。

原因間質性肺炎の原因はさまざまです

間質性肺炎を起こす原因としては以下のようなものがあります。

  • 関節リウマチや皮膚筋炎などの膠原病
  • 粉じん(アスベストなど)や
    カビ・ペットの毛・羽毛などの吸入
  • 薬剤(市販の漢方やサプリメントが
    原因のこともあります)や放射線治療

例えば、エアコンや加湿器のカビを吸入することで起こす間質性肺炎(過敏性肺炎)は、テレビなどの特集で見聞きされた方もおられるかもしれません。間質性肺炎の診療で最も大切な点は、改善できる原因がないかどうか色々な可能性を考え丁寧に診察することです!薬剤が原因であれば薬剤を中止することで改善が期待できます。また、カビが原因であればエアコンや加湿器を掃除することで改善するケースが大半です。
そして、どれだけ調べても原因が特定できない間質性肺炎を「特発性間質性肺炎」と呼びます。その特発性間質性肺炎のなかで最も多いのが、後述する「特発性肺線維症」という病気です。

検査・診断可能な範囲で間質性肺炎の原因を探します

間質性肺炎が疑われた場合、まず胸部レントゲン・胸部CTなどの画像検査、血液検査、肺機能検査などをおこないます(当院は胸部CTまで完備しておりますので、即日検査が可能です)。そして、詳細な問診や身体診察などで間質性肺炎の原因を探します。間質性肺炎の患者様の問診では「自宅は木造ですか?築何年ですか?ペットは飼っていますか?」などの細かい質問まで行うのですが、「それが病気と関係あるんですか?」と時々尋ねられることがあります。実はあの質問は間質性肺炎の原因を探っているのです。

原因が特定できない場合(特発性間質性肺炎)は、「特発性肺線維症かそれ以外か」を正確に判断することがポイントとなります。なぜなら、特発性肺線維症であれば抗線維化薬(肺が硬くなるのを抑える薬)を内服したほうが良い場合があるからです。
なお診断のために肺生検や気管支肺胞洗浄などさらなる精密検査の必要性がある場合は、当院から総合病院に紹介させていただきます。

胸部レントゲン・胸部CT・血液検査など

治療

原因がある間質性肺炎では、まずその原因に対する対応(薬剤が原因であれば薬剤の中止など)をおこないます。症状の改善が乏しい場合はステロイド治療を追加することもあります。
また後述する特発性肺線維症では肺が硬くなるのを抑える抗線維化薬の使用を検討します。
なお、2020年からは特発性肺線維症以外でも、PF-ILDと呼ばれる進行性の線維化を伴う間質性肺疾患(徐々に肺が硬くなり、症状が悪化している間質性肺炎)の場合は、抗線維化薬であるニンテダニブの使用が可能となっています。副作用や費用面の問題はありますが、これまでに間質性肺炎と診断され経過をみられている患者様で、抗線維化薬での治療にご興味がある方はぜひ当院にご相談ください。

特発性肺線維症ー 原因不明の間質性肺炎の代表 ー

原因が特定できない特発性間質性肺炎のなかで最も多いのが特発性肺線維症(IPF)です。50歳以上で発症することが多く、男性に多い病気です。この病気は国の難病にも指定されています。喫煙がIPFのリスクと考えられています。IPF以外の間質性肺炎と同様、徐々に肺が硬くなり、酸素を取り込みにくくなるため、労作時の息切れや乾いた咳(痰のからまない咳)が主な症状となります。胸部CTで“蜂巣肺“と呼ばれる、蜂の巣のような所見がみられることが特徴です。

治療

IPFでは、症状や画像所見の経過をみながら肺が硬くなるのを抑える抗線維化薬(ピルフェニドンやニンテダニブ)の内服を適宜検討します。しかし、抗線維化薬は長期間の内服が必要となる薬剤であり、副作用や高額な治療費などの問題もあります。当院では、治療の開始時期を患者様と相談しながら決めていきたいと考えています。

特発性肺線維症(IPF)の注意点急性増悪の予防が大切です

特発性肺線維症(IPF)で最も注意しないといけないのが“急性増悪”です。IPF患者様の死亡原因の4割が急性増悪であることからも、いかに「急性増悪の予防」が重要であるかがお分かりいただけるかと思います。急性増悪は気道感染(風邪・インフルエンザ・肺炎などの感染症)が引き金となり急激な呼吸困難を起こします。そのため気道感染予防として、外出時のマスク着用やうがい・手洗いの励行、肺炎球菌・インフルエンザ・新型コロナ・RSウイルスなどの各種ワクチン接種をお勧めします。
またIPFでは10~20%と高率に肺がんを合併するため、定期的な画像検査も重要です。当院ではCTを完備しておりますので、迅速な画像検査が可能となっております。

外出時のマスク着用・手洗い・うがい・各種ワクチン接種

西条すこやか内科から皆様へ

間質性肺炎は非常に専門性の高い病気です。ある意味、呼吸器内科としての腕の見せどころでもあります。勤務医時代には、カビが原因として疑われるケースで、患者様の自宅を訪問し環境調査をすることで確定診断をしたこともありました。このように改善できる原因のある間質性肺炎を見逃さないことと、特発性肺線維症の管理が間質性肺炎の診療において最も重要だと思います。
繰り返しになりますが、間質性肺炎は呼吸器科医による診療が望ましい専門性の高い病気です。当院は、呼吸器専門クリニックとして間質性肺炎の正確な診断と適切な管理を心掛けます。また胸部CTも完備しておりますので、定期的な画像検査も当院で可能です。これまで間質性肺炎と指摘されたことがある方も、まずはいちど当院にお気軽にご相談ください。