マイコプラズマ肺炎
ここ最近、中国でマイコプラズマ肺炎が流行しているというニュースが流れています。
もともとマイコプラズマ肺炎は年間を通してみられる病気ですが、秋から春にかけて患者数が増える傾向にあります。
今後日本でも流行する可能性があるため、今回は『マイコプラズマ肺炎』についてお伝えしようと思います。
マイコプラズマ肺炎とは
『マイコプラズマ肺炎』はMycoplasma pneumoniaeという微生物により引き起こされる肺炎です。
一般的な肺炎とは異なり、マイコプラズマ肺炎は小児や若い世代の方に多い肺炎です。
なかでも患者の8割が14歳以下とされるほど、子どもに多い病気として知られています。
ただし、30~50代の方でもマイコプラズマ肺炎を起こすことはあるため油断は禁物です。
初期症状は風邪と似ています
初期症状は、発熱・咽頭痛・頭痛・倦怠感などです。
そして、数日後に咳が出現して持続するのが典型的な経過です。
このようにマイコプラズマ肺炎は一般的な風邪と症状が似ています。
そのため、風邪だと思っていたら、マイコプラズマ肺炎だったというケースが良くあります。
「長引く乾いた咳」が特徴
マイコプラズマ肺炎の症状で最も特徴的なのは、「長引く乾いた咳」です。
“乾いた咳”というのは、痰の絡まない咳のことです。
「コンコン」や「ケンケン」といった咳といえばイメージしやすいでしょうか。
一般的な肺炎は、痰の絡んだ咳が出ることが多いですが、マイコプラズマ肺炎は痰の絡まない“乾いた咳”が出ることがひとつの特徴なのです。
そして、その“乾いた咳”が長期間続きます。場合によっては1ヶ月近く持続するケースもあります。
集団感染するケースも
マイコプラズマ肺炎の多くは「飛沫感染」で感染します。
前述した通り、しつこい咳を起こすため、その咳によってヒトからヒトへと感染が広がるのです。
特に、幼稚園・保育園・学校といった集団生活の場で流行することが知られています。
そのため、流行期はマスクの着用やうがい・手洗いなどの予防策が重要となります。
また、他の呼吸器感染症と比べて潜伏期間が2~3週間と長いことにも注意が必要です。
マイコプラズマ肺炎の診断
診断は、胸部レントゲンなどの画像検査や血液検査などでおこないます。
また、咽頭(のど)のぬぐい液を同時に検査することも多いです。
マイコプラズマ肺炎で特徴的なのは、血液検査で白血球は正常範囲であることが多いということです(一般的な肺炎であれば白血球は上昇していることが大半です)。
マイコプラズマ肺炎の治療
マイコプラズマ肺炎は、一般的な細菌感染症で良く使用されるベータラクタム系の抗菌薬は無効です。
そのため、マクロライド系・テトラサイクリン系・ニューキノロン系などの抗菌薬を使用します。
基本的にマイコプラズマ肺炎は予後の良い病気であり、通院での内服治療となることが大半です。
上記の薬剤の中でも、最もよく使用されているのがマクロライド系の抗菌薬です。
増加するマクロライド耐性
しかし、近年マクロライド系抗菌薬が効きにくいマイコプラズマが増えてきています。
そのため、マクロライド系を内服しても効果が乏しい場合は別の系統の抗菌薬(テトラサイクリン系やニューキノロン系)に変更することがあります。
その際に注意しないといけないのが、テトラサイクリン系の抗菌薬です。
テトラサイクリン系は8歳未満のお子さんに使用すると歯の着色などの副作用が起きることがあるため、基本的に使用は避けなければなりません。
そのため、8歳未満のお子さんではトスフロキサシンなどのニューキノロン系の抗菌薬を使用します。
登園・登校の目安
よく尋ねられる事のひとつが「幼稚園・保育園や学校にいつから行っていいか?」ということです。
マイコプラズマ肺炎は、学校保健安全法にて「急性期は出席停止、全身状態が良ければ登校可能」とされています。
つまり、明確に「〇日後から出席しても問題ありません」と定義されていないのです。
そのため、現実的には診断後1週間程度は療養し、熱が下がって元気になり、咳もある程度落ち着いた時点で登校するケースが大半です。
マイコプラズマ肺炎で入院
最後に僕自身の経験談をお伝えさせてください。
実は、僕も中学生の頃にマイコプラズマ肺炎を発症し、1週間ほど入院したことがあります。
入院中は毎日「ミノサイクリン」というテトラサイクリン系の抗菌薬の点滴をしていただきました。
入院中に今でも忘れられない出来事がありました。
その日もいつもと同じようにミノサイクリンの点滴をしていたのですが、その日は点滴をされている箇所が妙に痛く、痛みで冷や汗が出るほどでした。
当時の僕はちょうど思春期でもあり、ナースコールを押さずにひたすら我慢していました。
しかし、「もう耐えきれない」と判断しナースコールを押すと、すぐさま看護師さんが駆けつけてくれました。
看護師さんは、「おそらく血管痛だと思います」と点滴の速度を遅くしてくれました。
その後は痛みもなく点滴を終えることができました。
血管痛とは
『血管痛』とは、投与した薬剤が血管内皮を刺激して痛みを生じる現象です。
多くの場合、「薬剤の投与スピードをゆっくりすること」や「出来るだけ太い静脈から投与すること」で対処可能と言われています。
ミノサイクリンは血管痛を比較的起こしやすい薬剤だったのです。
当時の僕は医学知識も全くないため、ただひたすらに焦ったことを覚えています。
今回は「マイコプラズマ肺炎」についてお伝えしました。
マイコプラズマ肺炎は、小児や若年者に多く、“乾いた咳”が長引く病気です。
咳が続く場合は、お気軽に当院までご相談ください。
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西条すこやか内科
院長 奥本 穣(呼吸器専門医・総合内科専門医)