「痰の検査」の重要性
呼吸器内科の診療では『喀痰検査(痰の検査)』をよく行います。
特に重要なのが喀痰の「細菌検査」です。
痰の細菌検査とは
痰の細菌検査は、肺炎や気管支炎の原因となっている細菌を調べるためにおこなう検査です。
細菌検査は、「塗抹検査」と「培養検査」に分かれます。
- 塗抹検査
痰をスライドガラスに塗りつけて顕微鏡で観察する検査
- 培養検査
痰を培養して菌の種類を確認する検査
もし培養検査で肺炎を起こす何らかの菌が見つかった場合、薬剤感受性検査(その菌に効く抗菌薬を調べる検査)を追加でおこないます。
どんな時に細菌検査が役立つの?
この細菌検査が特に必要となるのは治療経過がよくないケースです。
一般的な抗菌薬を使用してもなかなか熱が下がらず、元気にならない。
そんな場合に痰の中から耐性菌が見つかることがあります。
耐性菌とは
耐性菌とは通常使用する特定の抗菌薬が効かない細菌のことです。
もともとCOPD(肺気腫)を始めとした肺の病気がある方は肺炎を繰り返すことが多いです。
また、ご高齢・脳梗塞後・パーキンソン病などの方にみられる誤嚥性肺炎も何度も繰り返すことが多い病気です。
このように肺炎を繰り返す方で、その都度抗菌薬を投与していると通常の抗菌薬が効かない耐性菌が出現してしまうことがあります。
次に肺炎を起こした時にも役立ちます
耐性菌が原因の肺炎であっても、喀痰検査をおこなっていれば薬剤感受性検査の結果をみて抗菌薬を変更することが可能となります。
また、次に肺炎を起こした時の抗菌薬選択の参考にもなりますので、可能な限り肺炎と診断した際には喀痰検査をしておくことが望ましいのです。
喀痰検査で大切なこと
その喀痰検査で最も重要なのが、“質の良い痰”を検査に出すことです。
いわゆる“唾液”では、あまり意味がありません。
ドロドロした粘度の高い“質の良い痰”を出すことが何よりも大切なのです。
「良い痰」を出すためのポイント
”質の良い痰”を出すためのポイントをご紹介いたします。
- 痰を出す時間帯は「起床時」がベスト
- 口の中の雑菌が痰に混じらないように、「歯磨き」と「うがい」で口の中をきれいにしてから痰を出す
- 強い咳とともに痰を出す
- 痰はお渡しした容器に直接出す
- すぐに容器を提出できない時は冷蔵庫で容器を保存
時折ティッシュに包んだ痰を持って、「検査して欲しい」と来院される患者様がおられます。しかし、残念ながらそれでは検査が出来ません。また痰が入った容器を室温で長時間放置しないように気をつけてください。
当院はクリニックなので、病院とは異なり外来診察時に痰を提出していただくことが多くなると思いますが、その場合でも出来るだけ“質の良い痰”を提出していただけるようにしていきたいと思います。
誤嚥性肺炎が右肺に多いワケはこちら〉〉 肺は左右非対称
長引く咳・喘息・いびき・息切れなどでお悩みの方は、東広島市西条町助実の呼吸器専門クリニック『西条すこやか内科』までお気軽にご相談ください。
西条すこやか内科
院長 奥本 穣(呼吸器専門医・抗菌化学療法認定医)