ウイルス性胃腸炎
以前の記事(カンピロバクター腸炎)で、感染性胃腸炎はウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎に分かれるとお伝えしました。
今回は、毎年秋から冬にかけて流行する『ウイルス性胃腸炎』についてお伝えします。
世間的には「嘔吐下痢症」と呼ばれることもある病気です。
ノロウイルスが最多
ウイルス性胃腸炎の原因として、ノロウイルスやロタウイルスが有名です。
原因として最多であるノロウイルスは、食べ物(牡蠣やホタテなどの二枚貝など)や感染者の吐物・便から人の手などを介して感染することが多いとされています。
ウイルス性胃腸炎の症状
ウイルス性胃腸炎の代表的な症状は、嘔吐・下痢・発熱です。
典型的な経過としては、まず突然の「嘔吐」、数時間経ってから「下痢」も加わります。
なお潜伏期間は1~3日程度とされています。
ノロウイルスとロタウイルス
同じウイルス性胃腸炎でも、ノロウイルスとロタウイルスでは患者層や症状が出る期間が少し異なります。
ノロウイルス
乳幼児から高齢者まで幅広い年齢の方が発症します。
多くの場合、1~2日程度で症状は改善してきます。
ロタウイルス
乳幼児に多く、便が白色となることで有名です。
ノロウイルスと異なり、1週間程度症状が続くことが多いです。
診断・治療
ウイルス性胃腸炎は、症状から診断されるケースが大半です。
特別な治療はなく、基本的には症状が改善するまで脱水にならないよう少しずつ水分補給をすること・消化の良い食事を摂ることなどが中心となります。
お薬では整腸剤を処方するケースが多いです。
また、嘔吐がひどいときは吐き気止めを処方することもあります。
下痢止めは飲んでいいの?
ここで大切なことがひとつあります。
ときどき、下痢止めを処方して欲しいと希望される患者様がいます。
僕も「薬を飲んで楽になりたい」という気持ちはよく分かります。
しかし、“下痢”は人間の体がウイルスを体外に排出しようとしている反応であるため、無理に下痢を止めると症状が長引いてしまいます。
そのため、そういったケースでは「飲まない方が早く治りますよ」とご説明し患者様にご理解いただくようにしています。
家族がウイルス性胃腸炎になったら
ご家族がウイルス性胃腸炎になった場合は、感染予防も重要です。
ウイルスは吐物や便の中に存在しているため、吐物の処理後や排便後は十分に手洗いをしましょう(下痢が改善した後も2週間程度は便中にウイルスが排出され続けていると言われています)。
また、便器などに残った吐物や便が乾燥し、ウイルスが空気中を漂い、それを吸い込むことで感染する場合があります。
そのため、便器などを適宜0.1%の次亜塩素酸ナトリウム液で消毒する必要があります。
なお、一般的なアルコール消毒はノロウイルス・ロタウイルスにはあまり効き目がありませんのでご注意ください。
消毒液(0.1% 次亜塩素酸ナトリウム液)の作り方
「水」 490mlに「ハイター」あるいは「キッチンハイター」 10mlを加えて、合計500mlにすれば完成です(500mlのペットボトルを使うと簡単だと思います)。
研修医時代の悲しい思い出
最後に僕自身の経験談です。
僕は牡蠣が好きで食べる機会も多いためか、ウイルス性胃腸炎に数年に1度かかります。
そのひとつが初期研修医時代の悲しい思い出です。
連休に高知県へ旅行に行くことになったのですが、旅行前日に事もあろうに焼き牡蠣を食べに行きました。
すると旅行2日目の夜に突如嘔吐と下痢に見舞われました。
綺麗な星空が見えると言われるペンションで友人達がワイワイと楽しむ中、僕は一晩中トイレの中で苦しみました。
牡蠣を十分に焼かずに食べてしまったことを大変後悔したことを覚えています。
これからは忘年会シーズンでもあり、広島人としては牡蠣を食べる機会も増える時期だと思いますので、皆様もご注意ください。
感染しないことが何よりも大切ですが、もし感染してしまった場合は家族内での感染予防が重要となります。
ウイルス性胃腸炎は予後の良い病気ですが、乳幼児や高齢者では極度の脱水から全身状態が悪化してしまうこともあるため、気をつけましょう。
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