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人の数だけ生きる道がある

皆様、改めまして新年明けましておめでとうございます。

2024年も『西条すこやか内科』を宜しくお願いいたします。

年末年始は開業準備もひと休みし、久々にゆっくりと過ごすことができました。

そのため、これまで読めていなかった本をまとめて何冊か読むことができました。

そこで今回は、僕が年末年始に読んだ本の中からおススメの1冊をご紹介したいと思います。

難病の子どもたちとの物語

その本は、幻冬舎から昨年9月に発売された「とっておきの診療ノート~僕とすてきな友人たちとの6つの物語~」です。

著者は、松田幸久さんという鹿児島県で小児科医をされている方です。

この本には松田先生が実際に医師として経験した、難病を抱えながらも力強く生きる子どもたちとの物語が綴られています。

心が温まる素敵な本です

ひとりの人間として向き合う

6つの物語があるのですが、中でも印象的だったのはダウン症のお子様を持つご両親の葛藤に向き合う話です。

「ワンオペ」「孤育て」という言葉をよく耳にするように、子育てをしていると孤独や負担を感じる場面は誰しもあるかと思います。

そのなか、我が子がダウン症と診断されたら動揺し、様々な思いを抱くのも無理はありません。

そのように葛藤するご両親に対し“医師として”だけでなく、“ひとりの人間として”真正面から向き合う姿を描いた物語です。

物語の中に印象的な一節がありました。

「人には、その人にしかできない使命のようなものがあると僕は感じています。それは先天性疾患や発達障害などを抱えている人もそうでない人も同じです。自分に与えられた命をどう活かして人生の花を咲かせていくのかが生きるということではないかと僕は思います。顔や性格が一人ひとり違うように、誰一人として同じ人はいません。人の数だけ、生きる道がある。だからこそ、その人の命はその人だけのものなのです。」

学生時代に出会ったALSの女性

この物語を読んだ後、僕は大学生の頃に出会った一人の女性が頭に浮かびました。

その方は、「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」という神経の難病を患っていました。

ALSとは手足の筋力が徐々に低下していく病気で、進行すると会話も難しくなり、寝たきりでの生活を余儀なくされる難病です。

その女性もALSが進行し寝たきりとなっていましたが、可能な限り自宅で過ごしたいという意思が強く、在宅サービスを利用しながら自宅で一人暮らしをされていました。

当時、大分大学には「その方の自宅を定期的に訪問し、ケアなどを通して様々なことを学ぶ」という趣旨の団体があり、僕もその団体に属していました。

部活やバイトのため頻繁に自宅を伺うことは難しかったですが、僕が訪問すると「男の子がきた」と文字盤を使って歓迎の言葉をかけてくださったことをよく覚えています。

なぜなら、この団体のメンバーは看護科の学生がメインであったため、男性メンバーは僕だけだったのです。

そのため、いつも僕の顔を見ると少し嬉しそうな表情をしてくださった記憶があります。

自分らしく強く生きていく

当時は医療の知識も乏しかったため、自宅を訪問しても出来ることは限られています。

そのため、基本的にはお話しすることが僕の役割でした。

ただし、お話しするといってもALSが進行しており、口を使った会話は出来ません。

その方は文字盤を使って色々と僕に話しかけてくださり、むしろ僕のほうが毎回元気をもらっていました。

その姿からは、ALSという難病を患っても“自分らしく強く生きていく”という強い意思が感じられました

その後、しばらく経って息を引き取られましたが、僕は彼女の姿から多くのことを学びました。

冒頭に紹介した一節の中にある「自分に与えられた命をどう活かして人生の花を咲かせていくのかが生きるということではないか」「人の数だけ生きる道がある」といった言葉をまさに体現していた方ではないかと思いました。

人生に無駄なことはない

福島県での勤務時代に乗っていたドクターヘリ

この本では、東日本大震災後に著者がボランティアとして被災地を訪れた際のエピソードも心に残りました。

著者はバルーンアートを以前に学んでおられたようで、その経験が被災された方々を現地で元気づけるのに役立ったそうです。

その体験を振り返りながら、「人生に無駄なことはない」と述べています。

それは僕が以前の記事(呉医療センターでの3年間)で書いた呉医療センター時代に災害医療研修を受けていたことが、その数年後の福島県での復興支援業務に生かされた経験と重なり、強く共感しました

ひとりの人間と人間

そして、この本を読んで印象的だった事が、「医師である著者」と「患者であるお子さんやそのご家族」との関係性です。

“医師と患者”という関係性ではなく、“ひとりの人間と人間”という関係性を築くことを大切にされていることが随所で伝わってきました。

それは僕が理想としている医師像とよく似ており、非常に共感する点が多かったです。

垣根の低いクリニック

僕が目指すクリニックは、“行きつけの食堂“のようなクリニックです。

それは病気になってから訪れる特別な場所ではなく、身体のことはもちろん、それ以外のことでも何でも気軽に相談できる「垣根の低いクリニック」です。

そして、体調が悪く不安を抱えた患者様に対し、「医療を通して、元気や安らぎ、ちょっとした幸せといったこころの“潤い”を提供する」ことが最大の目標です

そういった目標を持つ僕がこの本と出会えたことは何かの“運命”だと思います。

自分の進むべき医療の方向性を改めて再確認でき、背中を押してもらったような気がします。

この本と出会ったことで「これからも熱い情熱を持って、理想のクリニックを作るため日々全力投球していこう」と新年早々に決意を新たにすることができました。

もしご興味がございましたら、ぜひ皆様もお時間のある時に読んでみてください。

最後になりますが、このたびの能登半島地震により犠牲となられた方々にお悔やみを申し上げるとともに、被災されたすべての方々に心よりお見舞い申し上げます。

今回の震災で被災された皆様には、1日でも早く平穏な日常生活へと戻れますよう、心からお祈り申し上げます。

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長引く咳・喘息・いびき・息切れなどでお悩みの方は、東広島市西条町助実の呼吸器専門クリニック『西条すこやか内科』までお気軽にご相談ください。

西条すこやか内科 
院長 奥本 穣(呼吸器専門医・総合内科専門医)