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治療可能な認知症のひとつ(慢性硬膜下血種)

転倒して頭部を打撲したため、病院を受診される患者様は非常に多いです。

その際、頭部のCTで脳出血や骨折の有無を調べることがあります。もしCT検査で異常がなかったときでも、お伝えすべき情報があります。

それが『慢性硬膜下血種』という病気についてです。

過去に頭部外傷で病院を受診された際に、“頭部外傷後の注意点“と書かれた紙をもらったことがある方もおられるのではないでしょうか?

慢性硬膜下血種とは

慢性硬膜下血種とは、頭部打撲直後はCTで異常がなくても、徐々に脳の表面に血液(血種)が貯まっていく病気です。軽い頭部打撲でも1~3ヶ月以上経過して、この慢性硬膜下血種という病気になることがあります。

そして血種が大きくなり脳を圧迫することで、以下のような症状が出現します。

  • 物忘れがひどくなる
  • 歩きにくくなる
  • トイレの失敗が増える(尿失禁)
  • ぼんやりしている
  • 手足に力が入らなくなる
  • 理解できないことを言う
  • 頭痛や吐き気がある

慢性硬膜下血腫のリスクが高い方

ご高齢の方よくお酒を飲まれる方血液サラサラ薬を内服している方男性で発症しやすいと言われています。

特にご高齢の方は、脳の表面の隙間が拡がっているため、血種ができやすいと考えられています。

慢性硬膜下血腫の診断・治療

慢性硬膜下血腫は、頭部CTで診断することが大半です。当院のCTで慢性硬膜下血腫と診断した場合は、速やかに総合病院へ紹介させていただきます。

当院は最新のCTを完備しております

治療は「穿頭血種除去術」という頭蓋骨に1cmほどの小さな穴を開け、細い管を入れて血種を洗浄・除去する手術(局所麻酔)がおこなわれます。軽症の場合は、「止血剤」という出血を止める作用をもつ薬剤や漢方薬を内服していただき、経過をみることもあります。

僕自身も研修医時代に、この穿頭血種除去術の手術に何度か立ち会わせていただきました。なかには手術して数日後には症状が改善する患者様もいて、とても驚いたことを覚えています。

治療可能な認知症(Treatable dementia)

慢性硬膜下血種の症状は認知症とよく似ています

この記事を通して僕が最も伝えたいことは、「慢性硬膜下血種は治療可能な認知症(Treatable dementia)」ということです。

つまり、“物忘れがひどくなる”などの認知症のような症状が“比較的急に”現れた場合は、「慢性硬膜下血腫」という病気の可能性もいちど疑っていただければと思います。

ここで注意していただきたいのが、慢性硬膜下血腫の患者様の2割は明らかな頭部打撲のエピソードがないということです。また、ご家族が見ていない時間に頭部を打撲している患者様も時折みられます。そのため、数ヶ月以内に明らかな頭部打撲をした記憶がない方でも慢性硬膜下血腫の可能性があるのです。

「年齢も年齢だし、おそらく認知症だろう」と片付けず、まずは医療機関にご相談されることをお勧めします。

今回は『慢性硬膜下血種』についてご紹介いたしました。

この機会に“治療可能な認知症”のひとつ『慢性硬膜下血腫』という病気を理解していただければ幸いです。

当院でも頭部CTの撮影が可能ですので、認知症のような症状が急に現れた場合はお気軽にご相談ください。

東広島市西条町助実の内科・呼吸器内科・アレルギー科の『西条すこやか内科』は呼吸器疾患だけでなく、内科全般の疾患を幅広く診療致します!

西条すこやか内科 
院長 奥本 穣(呼吸器専門医・総合内科専門医)