突然の胸痛・咽頭痛(特発性縦隔気腫)
若年者が突然に胸痛を訴えた場合にまず頭に浮かぶ病気が「気胸」です。
多くの場合、気胸は胸部レントゲンで診断可能です。
そのため、レントゲンで異常がなければ気胸ではないと言えます(ただし、軽度の気胸はレントゲンではわからないこともあります)。
その際、頭の片隅に置いておかないといけない病気があります。
それが『特発性縦隔気腫』という病気です。
そこで今回は、特発性縦隔気腫をテーマにお伝えしようと思います。
突然の胸痛や頚部痛・咽頭痛
「特発性縦隔気腫」は、基礎疾患のない健康な若年者(特に男性が多いです)が突然に胸痛・呼吸困難を起こす病気です。なかには、頚部痛・咽頭痛や飲み込みにくさを訴える方もおられます。
これらの症状は気胸とほとんど変わらないので、症状だけでは気胸なのか特発性縦隔気腫なのかは判断がつきません。
縦隔気腫とは
肺胞(空気が入った小さな袋)が破れて、「縦隔」と呼ばれる左右の肺に挟まれた空間に空気が漏れることを縦隔気腫と呼びます。
そして、その空気が頚部にも広がっていくことがあり、その場合に前述した頚部痛や飲み込みにくさといった症状が現れるのです。
縦隔気腫は、肺に持病がある方や外傷で起きる場合もあります。一方で、健康な若い方が突然明らかな原因もなく縦隔気腫を起こした場合を、「特発性縦隔気腫」と呼びます。
忘れた頃にやってくる病気
特発性縦隔気腫は、3~4万人に1人が発症すると報告されている比較的珍しい病気です。
僕自身はこれまで4例の特発性縦隔気腫の症例を経験しており、個人的には実はもう少し多いのではないかと思うこともあります。
そのため、若年者が胸痛・呼吸困難で来院した際は必ずこの特発性縦隔気腫の可能性も疑うようにしています。
レントゲンでは診断出来ないことも
気胸と同様に胸部レントゲンで診断できる場合もありますが、3割ほどはレントゲンでは異常を指摘できないと言われています。
そのため、CT検査で初めて特発性縦隔気腫と診断されることもよくあります。
そういった事情もあり、自覚症状が強い場合などはレントゲンだけでなく、CTまでおこなうケースがあります。
当院は院内にCTを完備しておりますので、そういった場合でも迅速な対応が可能です。
皮下気腫に特徴的な「握雪感」
そして、縦隔気腫にときどき合併するのが「皮下気腫」です。
皮下気腫とは、“皮下組織のなかに空気が漏れた状態”です。
つまり、縦隔だけでなく、皮下組織にも空気が漏れてしまうのです。
そして皮下気腫を合併した場合、頚部や前胸部を触れると「握雪感(あくせつかん)」を認めることがあります。
「握雪感」とは、読んで字のごとく“新雪を握ったときに感じるブツブツという感覚”のことです。
皮下気腫を起こしている患部を触ると、この独特の“握雪感”を感じることがあります。
特発性縦隔気腫の治療法
治療は基本的に安静・経過観察となります。
ただし、なかには縦隔気腫が悪化して、外科的処置が必要となるケースもあります。
油断は禁物で、慎重に経過をみる必要があります。
今回は、若年者の胸痛で忘れてはいけない『特発性縦隔気腫』をご紹介しました。
すべての診断は疑うことから始まります!
当院では、こうした少し珍しい病気も頭の片隅に置いて、診療をおこなっていきます。
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西条すこやか内科
院長 奥本 穣(呼吸器専門医・総合内科専門医)