酸素の吸い過ぎには注意(CO2ナルコーシス)
“酸素は身体に良い“というイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか?
肺炎を起こし血中酸素飽和度が下がっている場合、酸素の吸入で呼吸は楽になります。
また、COPD(肺気腫)や間質性肺炎の患者様で、労作時の息切れが強いときは自宅での酸素吸入をおこなうこともよくあります。
このように多くのケースでは酸素を吸入することで呼吸困難感は改善します。
しかし、酸素の吸いすぎが原因で合併症を引き起こしてしまうこともあります。
そこで今回は、酸素療法の合併症のひとつである『CO2ナルコーシス』を取り上げようと思います。
意識障害を起こすことも
CO2ナルコーシスとは、二酸化炭素(CO2)が体内に異常に貯まり、意識障害や呼吸の減弱を引き起こす病気です。
場合によっては、亡くなってしまうこともあるため油断は禁物です。
通常は2つのセンサーで呼吸を調節
呼吸とは、酸素(O2)を身体の中に取り込み、二酸化炭素(CO2)を身体の外に出す作業のことです。
人間の脳は、血液中のO2とCO2の変化を感じとり、一定の数値になるように呼吸を調節しています。
例えば、血液中のO2が下がったり、CO2が上がると「もっと呼吸をしなさい!」と脳が指令を出して、呼吸を促進させます。
つまり、通常はO2とCO2の二つのセンサーが呼吸を調節しています。
CO2のセンサーが鈍くなる
しかし、慢性的に血液中のCO2が高い場合(Ⅱ型呼吸不全といいます)は、CO2が高いことに脳が慣れてしまいCO2のセンサーが鈍くなっています。
そのため、主にO2のセンサーのみで呼吸を調節せざるを得ない状態となってしまいます。
では、O2のセンサーのみで呼吸を調節している状態で、不用意に酸素を投与するとどうなるでしょうか?
酸素が増えたと脳が勘違いして、「呼吸はほどほどでいいよ!」と間違った指令を出してしまいます。
その結果、呼吸は抑制され、もともと高かったCO2がさらに上がり意識障害を起こしてしまうのです。
その状態を「CO2ナルコーシス」と呼びます。
CO2ナルコーシスのリスクが高い病気
CO2ナルコーシスを起こすリスクが高いのは、前述したように慢性的に血液中のCO2が高い場合(Ⅱ型呼吸不全)です。
なかでも多いのがCOPD(肺気腫)の患者様です。
また、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経筋疾患の患者様もリスクが高いと言われています。
COPDで在宅酸素療法をおこなっている患者様が、「息苦しいけぇ、自分で酸素量を上げたんよ」と言われることが時々あります。
その際はご自身の判断で酸素流量を上げるのは控えていただくようにお願いしています。
その理由は「CO2ナルコーシスを起こす可能性があるから」です。
CO2ナルコーシスの予防法
では、CO2ナルコーシスを防ぐためにはどうしたらいいのでしょうか?
答えは「少量の酸素投与から始める」です!
CO2ナルコーシスを起こすリスクの高い患者様は既往歴や喫煙歴などで判断がつくことが大半です。
そういったケースでは細心の注意を払いながら酸素の投与をおこないます。
しかし、CO2ナルコーシスを恐れて酸素投与が不十分となっては本末転倒です!
重要なのは「適切に管理しながら酸素投与をおこなう」ということです。
このような酸素投与を始めとした呼吸管理も呼吸器内科の得意分野です。
呼吸管理のことなら呼吸器専門クリニック『西条すこやか内科』にお任せください!
今回は、酸素療法の合併症のひとつ『CO2ナルコーシス』についてお伝えしました。
CO2ナルコーシスについて、ご理解いただけましたでしょうか?
分かりやすいように書いたつもりではありますが、分かりにくいようでしたら申し訳ありません。
これからも皆さんに少しでも呼吸器のことに興味を持っていただけるような記事を書いていきますので、宜しくお願いいたします!
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西条すこやか内科
院長 奥本 穣(呼吸器専門医・総合内科専門医)