鉄欠乏性貧血
「氷を無性に食べたくなるんです」
以前このように訴える患者様がおられました。
詳しく話を聞くと、1年ほど前から無性に氷を食べたくなり、仕事中もずっと氷を食べているそうです。最近は、職場の冷凍庫にMy 製氷皿を3枚置いて、作った氷をひたすら食べているとのことでした。
その話から疑われる病気が『鉄欠乏性貧血』です。
鉄欠乏性貧血とは
鉄はヘモグロビンを作るための重要な材料です。
そのため、鉄が不足していると十分な量のヘモグロビンを作ることが出来ません。
その結果、ヘモグロビンの値が基準より低くなってしまいます。
それこそが『鉄欠乏性貧血』です。
症状に気づきにくいことも
貧血の症状とはどのようなものでしょうか?
以前「パルスオキシメーター」の記事でご説明したように、トラック(=ヘモグロビン)と荷物(=酸素)で考えていただくと分かりやすいと思います。トラックの数自体が少ないと、いくら頑張っても身体中に十分な酸素を送ることは難しくなってしまいます。
そのため、貧血では息切れ・動悸・立ちくらみ・疲れやすいなどの症状がみられます。
しかし、ゆっくり貧血が進行することが多いため、症状になかなか気づきにくいことがあります。
鉄欠乏性貧血でみられる「異食症」
鉄欠乏性貧血では「異食症」と呼ばれる症状がみられることがあります。
異食症とは、”本来食べ物ではないものを無性に食べたくなる症状のこと”です。
なかでも、鉄欠乏性貧血は氷を食べたくなることが多く、「氷食症」と呼ばれることもあります。
また氷以外では、土や石を好んで食べる方もおられます。
鉄欠乏性貧血の診断
診断は血液検査でおこないます。
血液検査でヘモグロビンや鉄の値などをチェックします。
貧血があり、鉄の数値が低い場合に『鉄欠乏性貧血』と診断します。
「鉄欠乏の原因」を見つける事が重要
鉄欠乏性貧血を見つけた場合に重要なのは、”原因を探すこと”です。
鉄欠乏の原因としては、大きく分けて3つの可能性があります。
- 出血による鉄欠乏
鉄欠乏性貧血の原因として最多です。
消化管からの出血のほか、女性では過多月経や婦人科系の病気が原因となることもよくあります。
- 鉄の摂取不足
偏食やダイエットが原因で、”鉄の摂取不足”を起こすケースです。
特に成長が著しい思春期や妊娠中・授乳中は鉄の必要量自体が増加しているため、欠乏しやすいです。
- 鉄の吸収障害
胃から分泌される胃酸の働きで、鉄分は吸収しやすい形に変化します。
つまり、胃切除後などで胃酸が分泌されにくい状況だと、鉄の吸収障害で鉄不足になってしまいます。
また、ご高齢の方が内服していることの多い“胃薬”も要注意です。
胃酸の分泌を抑える胃薬を内服している場合、鉄不足を起こす危険性が高くなっています。
鉄欠乏性貧血の治療
治療は「鉄の補充」です。
通常は鉄剤の内服治療をおこないます。しかし、内服の鉄剤は1~2割の方で吐き気・ムカムカ感などを起こすことがあります。どうしても内服が難しい場合は、点滴で鉄を補充することもあります。
多くの場合は1~2ヶ月の内服治療で貧血は改善しますが、体内に十分な鉄が補充されるまで数ヶ月程度は鉄剤の内服を続けることをお勧めしています。
皆様は、息切れ・動悸・疲れやすいなどの症状はございませんか?
それは貧血が原因かもしれません。
貧血にも多くの種類がありますが、最もよく見られる貧血(特に女性)が今回ご紹介した『鉄欠乏性貧血』です。
鉄欠乏性貧血は鉄を補充するだけで症状が改善する貧血です。
息切れ・動悸などの症状がある際はお気軽に当院までご相談ください。
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東広島市西条町助実の内科・呼吸器内科・アレルギー科の『西条すこやか内科』は呼吸器疾患だけでなく、内科全般の疾患を幅広く診療致します!
西条すこやか内科
院長 奥本 穣(呼吸器専門医・総合内科専門医)