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えへん虫の原因のひとつ(後鼻漏)

皆様は“えへん虫”という言葉を聞いたことはありませんか?

「喉(のど)にイガイガとした違和感があり、何度も咳が出ること」を“えへん虫”と表現することがあります。

普段の診療でも、喉に何かがくっついているような違和感があると訴える患者様に対し「“えへん虫”が喉に張り付いているようですね」とお話しすることが時々あります。

えへん虫の原因はさまざま

“えへん虫”の原因はひとつではなく様々です。

例えば、『咽喉頭異常感症』というストレスが原因で発症する病気も原因のひとつです。この病気は、更年期障害・自律神経失調症・うつ病などに伴ってみられることが多い病気です。「喉に何かが詰まっている感じがする」と訴えられますが、検査をしても異常がみられないことが『咽喉頭異常感症』の特徴です。咽喉頭異常感症に対しては、漢方薬を使用することが多いです。

また以前の記事(長引く咳の原因のひとつ:逆流性食道炎)でご紹介した『逆流性食道炎』も“えへん虫”の原因となることがあります。逆流した胃酸が喉を刺激し、喉の違和感などの症状を起こすのです。

そして、今回のテーマである『後鼻漏』が“えへん虫”の原因となる事もよくあります。

後鼻漏とは

後鼻漏(こうびろう)とは、鼻水が喉の奥に流れ込む症状のことを言います。

鼻水というと鼻の穴から出るイメージを持っている方が大半だと思います。しかし、鼻の中は喉の奥とも繋がっています。そのため、鼻水が鼻の穴ではなく、喉の奥に流れ込む場合があります。そのことを『後鼻漏』と呼びます。

後鼻漏は、「痰の絡んだ咳(湿性咳嗽)」「繰り返す咳払い」「喉のイガイガ感」などが代表的な症状です。

後鼻漏を引き起こす病気

こうした後鼻漏症状を引き起こす病気としては、「副鼻腔炎(蓄膿症)」「アレルギー性鼻炎」「かぜ」が代表的です。当然ですが、鼻水の量が通常より増える病気が後鼻漏を引き起こします。特に、ネバネバした粘り気のある鼻水の場合に症状が悪化しやすいと言われています。

なかでも、慢性副鼻腔炎は80~84%に後鼻漏がみられ、そのうち28~41%に咳がみられたという報告もあるほど、副鼻腔炎と後鼻漏は強い関連性があります

後鼻漏を起こしやすい状況

ところで皆様は、鼻水が喉の奥に流れ込みやすい状況はどのような時だと思いますか?

正解は「仰向けで寝ている時」です。

仰向けの状態だと鼻水が喉の奥に垂れ込みやすいことは、このイラストを見ていただければご理解いただけるかと思います。

仰向けでは鼻水が喉の奥に流れ込みやすくなります

つまり、鼻の症状(鼻水など)があり、夜間や起床時に痰が絡んだ咳が目立つ場合に後鼻漏を積極的に疑う必要があるのです。

小さなお子様も要注意

なお副鼻腔炎による後鼻漏には、お子様も要注意です。

小さなお子様は鼻を上手くかむことができず、鼻をすすることが多いかと思います。

鼻をすすると副鼻腔炎になりやすいことが分かっており、お子様は副鼻腔炎になるリスクが高いです。また、副鼻腔炎は「かぜ」をきっかけに発症するケースが多く、「かぜ」を引きやすいお子様では、そうした意味でも副鼻腔炎には注意が必要と思われます。

夜間の痰絡みの咳は「後鼻漏」の可能性があります

前述のように、夜寝ている時は症状が強くなりやすく、痰の絡んだ咳を繰り返します(ときには、咳をし過ぎて吐いてしまうこともあります)。また、頻繁に咳をするため眠りが浅くなってしまうケースもみられます。お子様の場合、“睡眠の質”の低下は成長・発達の妨げとなることも懸念されるため、より早めの対応が望ましいと考えます。

後鼻漏の治療法

後鼻漏を引き起こしているそれぞれの病気に対する治療をおこないます。

副鼻腔炎の場合は、症状に応じて副鼻腔粘膜の線毛運動を活性化する作用をもつマクロライド系抗菌薬去痰剤を使用します。アレルギー性鼻炎の場合は、抗アレルギー薬の内服や点鼻薬を使用します。また漢方薬を併用することもあります。

今回は『後鼻漏』についてお伝えしました。

皆様は、「鼻水が喉の奥に流れ込むことで咳を起こす事」をご存じでしたか?

このように長引く咳の原因は”多種多様”です。

一見、呼吸器とは関係がないような病気でも咳を引き起こすことがあります。

「たかが咳、されど咳」とはよく言われる言葉ですが、実に“咳”の診療は奥深いです!

今後も呼吸器専門医として、咳をしっかり診療していきたいと思っています。

関連記事はこちら〉〉 長引く咳の原因のひとつ(逆流性食道炎)

長引く咳・息切れ・喘息などでお悩みの方は、東広島市西条町助実の呼吸器専門クリニック『西条すこやか内科』までお気軽にご相談ください。

西条すこやか内科
院長 奥本 穣(呼吸器専門医・総合内科専門医)